俺は思う
人間の体の中には記憶の袋というものがあり
記憶してゆく物をその袋の中にたくさん詰めて
紐で縛ってある
たまにその紐がほどけてしまい
記憶が外にこぼれてしまうと覚えていた事を忘れてしまう
袋は人それぞれ大きさが違う
袋がいっぱいになると古い記憶と入れ替えてゆく
だけど袋の隅のほうに忘れられた記憶がたくさん残っている
すべてを入れ替える事は難しい
最近
おかしな夢を見続けてる
一晩の夢の中で現代から過去へと戻ってゆく
そして 実際にあった今でも覚えているシーンになる
それだけならただ思い出が夢になっただけだが
不思議なのは
いつもその思い出の場面の前
思い出には残ってるけどその前はどうだったかという
ところが夢に出てくる
例は
俺は小さい頃 家族旅行でどこかの海に行った
その旅行のとき 岸壁のようなところで転んで
顔をすりむいてしまった
その事は今でも自分で覚えている
家族もその事を覚えてはいるが
なぜそこで転んだのかは解からない
ただ転んで顔をすりむいた事が思い出となって残ってる
しかし 夢で見るシーンは
その転ぶ少し前のシーン 自分でも忘れていた場面を見る
親が危ないからやめろと言うのも聞かず
岸壁に飛び乗り テトラポットの上を飛びながら走っている
何歩か跳んだところで足を滑らせ 転んでしまう
そのシーンの夢はそこで終わりまた違うシーンになる
やはり子供の頃
雨で増水した川に落ちて 危うくおぼれそうになったところを
通りかかったおばさんに助けられた事がある
夢ではなぜその川に行ったのか なぜ川に落ちたのかが
よみがえってくる
自分の覚えている場面の直前まで
そしてまた違う場面へ
夢の中のことだから 実際はどうだったのかわからない
でも自分の思い出に残っているシーンにつながる忘れていた記憶のように
死ぬ前に思い出が走馬灯のように蘇ると言うが
それにしてはおかしな走馬灯だ
もしかしたら 記憶の袋がそろそろいっぱいになってきたのか?
新しい記憶を溜め込むための準備なのか
それにしても俺の記憶って
怪我したり死にそうになった事や親や先生に怒られたことや
畑で火遊びしてたら 火事になって 焼畑しちゃったり
鍵の付いてたブルドーザーをいたずらしてたら
崖の下に落としてしまったり
無免許でつかまったり 家庭裁判所に送られたり
と散々な事しか
思い出に残っていないなんて
ろくな人生送ってないな
とても不思議な気分で最近目覚めている
人生80年として 40歳はちょうど半分
そういったことも関係してるのだろうか?